9. 題目・要旨・図表を本文とそろえる
文献を探すときは、題目と要旨を読んでから、本文へ進むかどうかを決めることがある。自分の論文の題目と要旨も、本文を知らない人が読む。何を調べ、何が分かった研究なのかが、それだけで伝わるように書く。本文から切り離して見られる図表にも、内容を理解するための説明を添える。
9.1 題目で研究の内容を特定する
題目を考えるときは、何を明らかにした研究かを、まず平易な文で書き出す。そこから対象、方法、中心的な知見のうち、研究を識別するために必要な情報へ絞る1。「大学生の文献選びに関する研究」では論点が広すぎるなら、何をどの資料で調べたかを加えて、次のように書ける。
大学生は読む文献をどう選ぶか:インタビューで語られた判断理由の分析
この題目なら、学生が語った判断理由を分析する研究だと分かる。同じ研究を「文献選択の効果的な方法」と名づけると、選び方の有効性を確かめた論文として読まれてしまう。題目を具体的にする際も、読者が期待する内容を、実際の資料と分析に合わせる。
9.2 要旨には何が分かったかを書く
題目で研究に関心を持った読者は、要旨で結果の概要を確かめる。要旨が「調査を行った」「結果を考察した」で終わると、得られた答えが分からない。目的と方法に続けて、主要な結果とその意味まで記す。
草稿を作るには、本文の各部分を短くまとめて並べる方法と、中心的な問いと答えを先に取り出して全体を組み直す方法がある2。前者では各部分に何を書くかが定まっているかを確かめられ、後者では何を読者に伝える研究かを絞りやすい。どちらから始めても、本文にある根拠と条件を保ち、投稿先が指定する項目と字数に合わせて整える。
本研究は、大学生がレポート用の文献を選ぶ際の判断を記述することを目的とした。学生へのインタビュー資料を用い、文献を選んだ理由を比較した。課題との関連を重視して要旨を確かめる語りに加え、提出期限が近い場面では入手しやすさを優先したという語りが得られた。文献選びは、内容の関連性だけでなく、期限までに読むものを確保する判断としても捉えられる。
一文目は目的、二文目は方法、三文目は結果、四文目は結果から読み取れる意味を述べている。実際の要旨も、各文が背景、課題、方法、結果、結論のどの役割を担うかを書き出すと、不足や重複を点検できる3。これらを必ず一文ずつに分ける必要はないが、「何が分かったか」を担う文が抜けていないかは確かめる。
短くする際も、「インタビュー」や「語り」を省くと、実際の選択行動を観察した結果のように読める。実際の原稿では、調べた人数や分析方法などの必要な情報を補い、主要な結果とその条件を残す。そこから重複した説明を削り、指定の字数へ収める。
9.3 図表も主張を伝える一部として作る
結果を見渡せるようにするには、図表も役立つ。関係や手順を示したいなら図、値や項目を正確に比べたいなら表というように、伝える内容に合わせて形式を選ぶ4。本文では、その図表のどの関係や違いが主張を支えるかを説明する。
図の矢印には、何を表すかを添える。「要旨を読む→文献を選ぶ」という図なら、行動の順序を示すのか、前の行動が後の行動に影響するという主張なのかを区別する。「矢印は、参加者が語った行動の順序を示す」と注記すれば、図の読み方が分かる。
表には、行と数値の意味を添える。一行が参加者一人を表すのか、一つの選択場面を表すのかで、人数と場面数の読み方が変わる。空欄も、発言がなかったのか、質問しなかったのかを区別し、凡例や注記で説明する。
図表だけを読む人にも、何を調べた結果かが分かる説明を添える5。グラフの軸や表の項目名には、何を測った値かと単位を示し、比較した対象や条件も明確にする。
図表を直した後は、本文の説明も読み直す。分類名や項目の順序を変えたのに古い説明が残れば、文章と図表が別のものを指してしまう。名称、数値、説明している関係を照合し、図表が支える内容と本文の主張が合っているかを確かめる。
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研究内容から題目を絞り込む方法について、都筑(2006)、第7章を参照。 ↩
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要約を章ごとの縮約から作る方法と、主題を前面に出して再構成する方法について、小熊(2022)、第10章「要約とタイトル:その1」「要約とタイトル:その2」を参照。両者の点検への使い方は、このガイドで整理した。 ↩
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要旨に背景、問題、手段と結果、結論を含める型について、福地と園山(2019)、TOPIC 4.5を参照。同書の「起承転解結」の各部分を、文数の固定ではなく、情報の役割を点検するために用いている。 ↩
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図と表の使い分け、図表の見せ方について、都筑(2006)、第8章を参照。 ↩
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図表の説明、項目名、単位について、福地と園山(2019)、TOPIC 4.7を参照。 ↩