参考文献と読みどころ
このガイドの文章規範は、以下の14冊から論証、構成、引用、文体に関する助言を参照して整理した。各項目には、どの内容を参照したかと該当する章やページを示している。作例と点検の手順は、これらの助言を踏まえて本ガイドで構成したものである。
ページを示す項目は、参照した刊行書のページを用いている。電子書籍は版や表示環境によってページが変わるため、章や節で参照箇所を示す。新版がある本も、本文の出典は各項目に記した版である。
研究論文の構成や文章を点検するための本は、第11章「論文執筆のための読書案内」で目的別に紹介している。
論文の論証と構成
小熊英二(2022)
小熊英二(2022)『基礎からわかる 論文の書き方』講談社(講談社現代新書)。2022年6月1日発行の電子版を参照した。
問いと方法を組み合わせた調査設計、先行研究の学問体系と今回の研究との関係を参照した。該当箇所は、第5〜6章である。要約の作り方は第10章、引用や先行研究の紹介を原典に戻って確認する点検は第11章を参照した。
研究の主題、対象、方法をどう結びつけるかという観点を用いた。数学や一部の文学研究などへの適用の留保を保ち、分野名だけで論文の構成や方法を決める規則にはしていない。
佐渡島紗織と吉野亜矢子(2021)
佐渡島紗織、吉野亜矢子(2021)『これから研究を書くひとのためのガイドブック:ライティングの挑戦15週間』(第2版)ひつじ書房。
中心的な主張の説明と複数文献の内容をまとめの言葉に対応させて書く方法を参照した。該当箇所は、第6章(pp. 36–39)、第11章(pp. 80–83)である。
吉岡友治(2015)
吉岡友治(2015)『シカゴ・スタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術:世界で通用する20の普遍的メソッド』草思社。
読者の疑問に応答すること、主張と例を対応させること、根拠を吟味することを参照した。該当箇所は、第7節(pp. 72–77)、第13節(pp. 136, 138, 140)、第16節(pp. 168, 170, 172)である。
都筑学(2006)
都筑学(2006)『心理学論文の書き方:おいしい論文のレシピ』有斐閣。
目的、方法、結果、考察の対応、題目の作り方、図と表の使い分けを参照した。該当箇所は、第6章(pp. 145–152)、第7章(pp. 170–173)、第8章(p. 181, pp. 185–186, p. 193)である。主に心理学の卒業論文や量的研究を扱うため、研究手続は自分の方法に合わせて読み分ける必要がある。
日本語の文章と推敲
福地健太郎と園山隆輔(2019)
福地健太郎(文)、園山隆輔(図解)(2019)『図解でわかる!理工系のためのよい文章の書き方:論文・レポートを自力で書けるようになる方法』翔泳社。初版の電子版を参照した。奥付は初版第8刷と「2024/05/30版」を示しており、2024年刊の増補改訂版とは異なる。
主題の一文化、既知の情報から新しい情報へ進む順序、問題と結果の対応、文脈と主述の点検を参照した。該当箇所は、TOPIC 1.1、2.1、2.5、3.6、3.11である。助詞と修飾語はTOPIC 3.5と3.10、推敲、要旨、引用、図表はTOPIC 4.3と4.5〜4.7を参照した。
論文構成の詳説は実験系の理工系論文にやや偏るため、質的研究の方法や結果を報告する際は、そのまま適用せず研究の立場と照合する。段落の字数、推敲の日数、削る量の目安を一律の要件にはしていない。
石黒圭(2015)
石黒圭(2015)『この1冊できちんと書ける! 論文・レポートの基本』(電子書籍版、Ver 1)日本実業出版社。2015年3月1日発行の電子版を参照した。2024年刊の新版とは異なる。
構成の役割、考察の裏づけ、問いと答えを含む結論を参照した。該当箇所は、第1章と第6〜7章である。用語の定義は第10章、動詞と時制、文末と根拠、名詞化、語順、否定と比較の範囲は第12〜14章を参照した。接続詞と列挙は第15章を参照した。
質的調査の資料に典型性を求める助言と、客観性のために一人称を抑える助言は、質的研究全般の要件としては用いていない。研究目的と判断主体に合わせて、資料の選び方と表現を検討する。
滝浦真人編著(2022)
滝浦真人編著(2022)『日本語アカデミックライティング』(改訂版)放送大学教育振興会。国立国会図書館の書誌。
主語と述語、引用主体の示し方を参照した。該当箇所は、第10章(pp. 156–171)、第11章(pp. 173–187)である。
テクニカルコミュニケーター協会編著(第2版)
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会編著『日本語スタイルガイド』(第2版)テクニカルコミュニケーター協会。参照した版は2012年発行の第2版第3刷。ISBN 978-4-902820-06-5。
主述の対応、態と視点、用語の統一を、概念と判断主体を保つための点検に用いた。該当箇所は、pp. 57–69、114–116、135–143である。マニュアルや使用説明を主な対象とする本なので、文体に関する助言の適用は学術論文の目的に照らして判断する。
松浦年男と田村早苗(2022)
松浦年男、田村早苗(2022)『日本語パラグラフ・ライティング入門:読み手を迷わせないための書く技術』研究社。
段落の要点と範囲、支持する情報、段落間の接続を、主張と根拠をつなぐための点検に用いた。該当箇所は、第1章(pp. 3–26)、第2章(pp. 27–50)、第3章(pp. 51–73)、第4章(pp. 83–108)、第5章(pp. 109–124)である。
阿部幸大(2024)
阿部幸大(2024)『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』光文社。2024年7月24日発行の電子版を参照した。
段落を文ごとの働きに分け、説明の不足を探す「パラグラフ解析」を、第3章の点検に用いた。第4章では、文献の内容を自分の言葉で記録する読み方を参考にした。該当箇所は、第4章3節と第6章3〜4節である。
本書は、文学研究や文化研究を背景にした論文観も示している。本ガイドでは、段落や文献紹介の説明を整えるための助言を参照し、論文全体の構成や研究の貢献については、研究の目的と方法に照らして判断する。
佐渡島紗織ほか編著(2015)
佐渡島紗織、坂本麻裕子、大野真澄編著(2015)『レポート・論文をさらによくする「書き直し」ガイド:大学生・大学院生のための自己点検法29』大修館書店。国立国会図書館の書誌。
原稿の問題を文、用語、段落、構成などに分けて診断する方法を参照した。該当箇所は、pp. 2–13、16–29、42–59、62–69、72–83、86–97である。
質的研究の方法と結果を書く
Lahman(2022)
Lahman, M. K. E. (2022). Writing and representing qualitative research. SAGE.
読者に合わせた表現、引用の選び方、参加者の表現、知見の範囲、査読への対応を参照した。該当箇所は、Chapter 3、Chapter 5、Chapter 6である。電子版を用いたため、参照位置は章で示している。
太田裕子(2019)
太田裕子(2019)『はじめて「質的研究」を「書く」あなたへ:研究計画から論文作成まで』東京図書。
方法を具体的に書くこと、結果にデータの解釈を含めること、分析順と記述順を分けることを参照した。該当箇所は、第7章(pp. 135–137)、第10章(pp. 183–190、201–203)である。
ハイディ・M・レヴィット(2023)
レヴィット,ハイディ・M(2023)『心理学における質的研究の論文作法:APAスタイルの基準を満たすには』(能智正博、柴山真琴、鈴木聡志、保坂裕子、大橋靖史、抱井尚子訳)新曜社。
実施した手続の説明、結果の具体的な記述、引用、頻度と割合の扱いを参照した。該当箇所は、第3章(pp. 27–36)、第6章(pp. 70–73、77–78)である。JARS-Qualの解説書として参照している。
質的研究の報告に関する助言は、採用した方法と実際の手続に照らして用いる必要がある。各書に挙がる手続は、すべての研究に共通する要件とは限らない。本ガイドでは、目的、資料、分析の関係を読者に説明するための観点として参照している。