5. 方法と結果を具体的に報告する

自分の研究を報告するときは、資料をどう調べ、そこから何が分かったかをつなげて書く。「インタビューを実施して分析した」「三つのカテゴリーが得られた」とだけ記すと、読者にはその間の作業が見えない。資料のどの部分をどう比較したかを示して初めて、得られたカテゴリーの根拠を確かめられる。

手法を比較した研究でも、使ったデータ、比較対象、評価した項目、得られた結果を対応させる。「提案手法の方が優れていた」とだけ書かず、どの条件で何を測り、どの結果がその評価を支えるかを示す。

方法の説明では、その資料と手順でなぜ知りたいことを調べられるかも示す1。文献を選んだ理由を学生自身の説明から知りたいなら、その目的をインタビューの選択理由として記せる。実際の検索操作の順序を知りたいなら、操作の記録や観察を含め、問いに答える資料の組み合わせを検討する。採用した方法と研究の問いを対応させることで、読者は方法の適否も判断できる。

5.1 判断に必要な手順を示す

「分析した」の一語では、実際に何をしたかが分からない。資料のどこを取り出し、何を記録し、何と何を比べたかまで書く。太田(2019)も、作業をまとめた名前だけでなく、資料に対して行ったことを具体的に記す必要を指摘している2。学生の文献選びを扱うインタビュー記録なら、次のように書ける。

筆頭著者は、文献を選んだ理由が語られた箇所を取り出した。一つの選択場面ごとに、学生が判断に使った情報と候補を残した理由を記録した。同じ参加者が語った複数の場面を比べ、異なる参加者の場面とも比べた。

この手順では、一つの選択場面を、比較する一まとまりとしている。同じ場面について三度発言していても、一つの場面として整理する。発言ごとに分ける方法とは、比較するものの数や内容が変わるため、なぜ場面ごとに整理したかも説明する。実際の目的が場面による選び方の違いを調べることなら、その目的を理由として記せる。

調査を進める間に問いや比較の基準を変えた場合は、変更のきっかけと、その後の調査への反映を書く。小熊(2022)は、調査から作業仮説を作り、調査と見直しを繰り返す設計を説明している3。文献選びの例なら、予備調査で時間の制約が語られたため、本調査では課題との関連に加えて提出期限も尋ねることにしたと記せる。変更した範囲を示せば、調査から生まれた見方を、調査前からの予測と区別して読める。

比較や分類を複数人で行った場合は、誰がどの作業を担ったかを示す。「共同研究者が確認した」と書くなら、何を照合し、何を確認または修正したかまで説明する4。

5.2 分類の名前に加えて分かった内容を書く

資料を比較した結果は、分類名に加えて、何が分かったかを書く。「文献選びで困ったこと」という見出しだけでは、何を尋ねたかしか伝わらない。「候補は見つかっても、課題との関連を判断できずに読むものを選べない場合があった」と記せば、困難が生じる場面を示せる。レヴィット(2023)が重視するように、知見は質問項目を言い直すところから、研究の問いに答える内容へ進む必要がある5。

この例で示したいのは、候補を見つけることと、読むものを選べることの違いである。続く資料の提示では、どの語りからこの違いを読み取ったかを説明する。分類名を挙げた後に関連しそうな発言を並べるよりも、引用する箇所と説明する点を絞れる。

5.3 引用が結果のどこを支えるかを示す

知見を支える発言を選んだら、ほかの参加者の語りとも比べる。課題との関連を重視する発言の後に「Bも同じ理由を挙げた」と続ければ、共通点を示せる。「Cは入手しやすさを優先した」と続ければ、別の基準があることを示せる。このように引用同士の関係を説明すると、どの発言が共通する傾向を表し、どれが違いや例外を表すかが分かる。Lahman(2022)も、頻出する語りに加えて、異論や例外を検討する意味を指摘している6。

Cの「入手しやすさを優先した」という発言を解釈するには、選択したときの状況も必要になる。期限が迫っていたのか、読む時間に余裕があったのかによって、選んだ理由の捉え方は変わる。発言を引用するときは、解釈に関わる状況を添える。匿名性を守るために背景を省く場合も、発言の意味を変えていないかを確かめる。

5.4 人数や頻度には数え方を添える

複数人の語りをまとめるときには、人数で示す場合もある。たとえば、「6人中4人が、要旨を読んで文献を選ぶと述べた」と書くなら、6人全員に選び方を尋ねたかも示す7。残る2人にはその話題を尋ねていなかったのなら、要旨を使わない2人として扱うことはできない。

一人が同じ内容を三度話した場合も、人数なら1人、発言数なら3件になる。数値を示すときは、人数、発言数、選択場面の数のどれを数えたかを記す。「全6人に選び方を尋ね、要旨の利用に言及した人数を数えた」のように、尋ねた相手と数え方を添えると数値の意味が伝わる。


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  1. 問いに答える方法の組み合わせと調査設計について、小熊(2022)、第5章「『方法論』とは何か」「調査設計の一例」を参照。 ↩

  2. 方法の具体的な記述について、太田(2019)、第7章を参照。 ↩

  3. 調査から仮説を作り、見直しを繰り返す設計について、小熊(2022)、第5章「『仮説検証型』と『仮説生成型』」を参照。 ↩

  4. 研究の目的と条件に即した手続の説明について、レヴィット(2023)、第3章を参照。 ↩

  5. 知見と質問項目の違いについて、レヴィット(2023)、第6章を参照。 ↩

  6. 引用の選択と異なる語りの扱いについて、Lahman(2022)、Chapter 5を参照。 ↩

  7. 頻度と割合の報告について、レヴィット(2023)、第6章を参照。 ↩