3. 段落で主張と根拠をつなぐ
各セクションでは、説明する論点ごとに段落を分ける。段落の冒頭で何を述べたいかを示し、その理由や根拠となる資料を続けると、読者は主張を確かめながら読める。このように段落の要点を示す文を中心文という。松浦と田村(2022)も、冒頭で要点と範囲を示し、それを支える情報を続ける書き方を論じている1。
3.1 中心文を具体的な説明で支える
段落で何を論じるかによって、同じ資料でも説明する部分は変わる。会議についての「その場では質問しづらいので、後で議事録を読んで確認していました」という発言なら、質問のしづらさにも、会議後の確認にも注目できる。会議後の確認を論じるなら、その点を冒頭の中心文に置き、発言と解釈を続ける。
参加者Aの語りでは、会議内容の確認は会議後にも続いていた。会議中に疑問が残った際の対応について、Aは「その場では質問しづらいので、後で議事録を読んで確認していました」と説明した。議事録は、この参加者にとって会議中の質問を補う確認手段になっていた。
この段落を文ごとに分けると、最初の文は主張を、次の文は根拠となる発言を示している。最後の文は、発言から議事録の役割を読み取り、主張へのつながりを説明している。阿部(2024)が示すように、文ごとの機能を確かめると、何を説明するための文かを見分けやすい2。
原稿の点検でも、資料の提示、解釈、主張への接続を分けて見る。引用だけが続くなら、資料のどこから何を読み取るのかを補う。解釈だけで根拠が見えないなら、必要な資料を示す。情報量を増やす前に、どの役割の説明が足りないかを判断する。
ここで示した三文構成は、どの段落にも当てはまる型ではない。文献を比較する段落なら、それぞれの文献の説明が必要になり、方法を報告する段落なら、対象と操作を具体的に記すことになる。その論点を理解するのに必要な情報がそろえば、冒頭を言い直すだけのまとめ文を加える必要はない。
3.2 段落の切れ目で論点を進める
先ほどの段落では、引用の中に出てきた「議事録」を、次の文の冒頭で受けている。そこに「会議中の質問を補う確認手段」という説明を加えると、読者は議事録に注目したまま、その役割を理解できる。文を並べる際は、前の文に出てきた対象を次の文で説明するなど、知っている情報から新しい情報へ進めると読みやすくなる3。
次の段落では、前の説明に何を加えるかを冒頭に示す。別の参加者Bが、議事録を読んでも疑問が残ったと語った場合を考える。Aの段落の後には、次のように続けられる。
議事録があっても、疑問を解消できない場合があった。参加者Bは「結論だけが書いてあって、なぜそう決まったのかは分かりませんでした」と語った。Bが知りたかった決定の理由は、結論の記録だけでは伝わっていなかったと読み取れる。
Aの段落は、議事録が質問を補った経験を示していた。Bの段落は、記録があっても、知りたい内容が書かれていなければ疑問が残ることを示している。二つを並べると、記録の有無に加えて、何が記録されていたかを検討する必要が見えてくる。「また、Bは」と始めるよりも、前の説明にどのような条件を加えるのかが伝わる。
ただし、一つの主張の理由と作例まで別々の段落にすると、読者は離れた説明を結び直すことになる。前の文を具体化する例は同じ段落に置き、別の主張や限定へ進むところで段落を分ける。各段落の論点を短く書き出すと、同じ説明の繰り返しや、一段落に複数の論点が入り込んだ箇所を見つけやすい。
個々の段落は読めても全体のつながりが分かりにくい場合は、気になる段落を隠し、前後の説明からそこに必要な内容を予想してみる。実際の段落と比べて、大事な前提が抜けていないか、別の論点が入り込んでいないかを調べる。予想との差があれば、隠した段落に加えて、前の段落の結びや次の段落の中心文も点検する4。
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段落の要点、範囲、支持する情報について、松浦と田村(2022)、第1〜5章を参照。 ↩
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阿部(2024)、第4章3節「パラグラフ解析」。ここでの文の役割分けは、本書の点検方法を作例に用いたものである。 ↩