2. セクションの役割に合わせて書き分ける
主張を支える資料がそろったら、読者が確かめたいことに応じて説明を分ける。たとえば、結論の根拠を確かめるには結果を、その結果が得られた過程を確かめるには方法を読む。このように説明を探せるよう、論文は背景、方法、結果、考察などのセクションに分かれている。
2.1 見出しの名前より説明の役割を見る
それぞれのセクションには、読者の疑問に答える役割がある。方法なら「何を、なぜそのように行ったか」、考察なら「結果から何が言えるか」が中心になる。目的、方法、結果、考察の対応を保つという都筑(2006)の議論を踏まえ、各部分で伝えることを整理すると、次のようになる1。
| 説明の役割 | 読者に伝えること |
|---|---|
| 問題を提示する | 何を扱い、その検討がなぜ必要か |
| 先行研究を検討する | 他の研究がどこまで説明し、自分の議論がどう関わるか |
| 方法を報告する | 何を、なぜそのように行ったか |
| 結果を示す | 資料や分析から何が分かり、何がそれを支えるか |
| 考察する | その結果を既存の理解と比べ、どのような意味を読み取れるか |
この五つの役割を、五つの節へ一対一で割り当てる必要はない。分野によっては、一つの節で結果を示し、その意味を考察する構成もある。その場合も、資料から何を読み取ったかを説明してから、先行研究との比較へ進むなど、読者が判断の過程を追える順に並べる。
2.2 結果の説明から考察へ進む
結果と考察を分けるときに迷いやすいのが、資料の解釈をどちらに置くかである。インタビューなどの質的データを扱う研究では、資料からパターンを読み取ること自体が分析に当たる。その読み取りまで考察へ移してしまうと、結果の節には発言だけが残り、分析で得た知見が伝わらない。太田(2019)が述べるように、データに即した解釈は結果にも含まれる2。
たとえば、ある参加者が会議中には質問せず、会議後に記録を読み直して確認していたとする。この資料から「会議内容の確認は会議後にも続いていた」と読み取った記述は、結果に当たる。この結果を、会議を通した情報共有についての先行研究と比べ、従来の説明をどう補足できるかを論じると、考察へ進む。
このように、結果で得た説明を先行研究に照らして意味づけることで、結果から考察へつながる。両者を別の節にするか、一つの節にまとめるかにかかわらず、資料に即した読み取りと、そこから進めた議論を読者が見分けられるようにする。
2.3 発見した順番と説明する順番を分ける
結果を説明する順番は、分析で発見した順番と同じでなくてもよい。複数の発言を比較してカテゴリーを作った場合でも、本文ではカテゴリーの意味を先に説明し、根拠となる発言を続けられる。先に意味が分かれば、読者はそれぞれの発言がどの説明を支えるかを考えながら読める。太田(2019)も、分析の進行順と結果の記述順を区別している3。
ただし、カテゴリーを先に説明したことが、分析前からそのカテゴリーを用いていたことにはならない。カテゴリーをどう作ったかは、方法の節で実際の作業順に即して報告する。途中で観点や手順を変えた場合も、変更した理由と経緯を残す。
実施した作業と、原稿上で行う説明は、時制でも書き分けられる。方法で実施済みの作業を報告するなら「比較した」、その結果を図表へ案内するなら「表1に示す」、用語を定義するなら「〜と呼ぶ」と書ける。すべてを同じ時制にそろえるよりも、その文で何を述べているかに合わせる方が、作業と説明の違いを伝えられる。
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目的、方法、結果、考察の対応について、都筑(2006)、第6章を参照。表は本ガイドで説明の役割として整理したものである。 ↩
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結果に含まれるデータの解釈と考察の役割について、太田(2019)、第10章を参照。 ↩
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分析の順序と記述の順序について、太田(2019)、第10章を参照。 ↩