2. セクションの役割に合わせて書き分ける

主張とその根拠が見えてきたら、原稿のどこに何を書くかを考える。結論の根拠を知りたい読者は「結果」を、資料の集め方や分析の手順を知りたい読者は「方法」を探す。背景、方法、結果、考察などのセクションに説明を分けると、読者は確かめたい箇所を見つけやすくなる。

2.1 見出しの名前より説明の役割を見る

各セクションに書く内容は、読者の疑問に答える形で整理できる。都筑(2006)が論じる目的、方法、結果、考察のつながりと、石黒(2015)の構成の説明を踏まえると、次の六つの役割に分けられる1。

説明の役割 読者に伝えること
問題を提示する 何を明らかにしたいのか、なぜその問題を調べるのか
先行研究を検討する すでに何が分かっていて、自分の研究は何を加えるのか
方法を報告する 何を、なぜそのように行ったか
結果を示す 資料や分析から何が分かり、何がそれを支えるか
考察する 結果は先行研究とどう一致し、どこを補足または修正するのか
結論をまとめる 何を明らかにし、どの範囲で答えを示したのか

この六つの役割を、六つの節へ一対一で割り当てる必要はない。分野によっては、一つの節で結果を示し、その意味を考察する構成もある。その場合も、資料から何を読み取ったかを説明してから、先行研究との比較へ進むなど、読者が判断の過程を追える順に並べる。石黒(2015)も、見出しや順序を覚えるだけでなく、各部分が担う説明を理解する必要を指摘している1。

構成を点検するときは、まず扱う問題と得られた結果を短く書き、結果がその問題への答えになっているかを比べる。次に、その答えを支える資料と、資料を得た方法が対応するかを確かめる。福地と園山(2019)は、問題と結果を先にまとめてから手段を整理する方法を勧めている2。複数の問題を扱う論文でも、問いと結果の組ごとに点検すれば、どの説明が不足しているかを探せる。

2.2 結果の説明から考察へ進む

結果と考察を分けるときに迷いやすいのが、資料の解釈をどちらに置くかである。インタビューなどの質的データを扱う研究では、資料からパターンを読み取ること自体が分析に当たる。その読み取りまで考察へ移してしまうと、結果の節には発言だけが残り、分析で得た知見が伝わらない。太田(2019)が述べるように、データに即した解釈は結果にも含まれる3。

たとえば、ある参加者の「その場では質問しづらいので、後で議事録を読んで確認していました」という発言を考える。この発言を根拠に、「この参加者の語りでは、会議内容の確認は会議後にも続いていた」と説明するのは、結果に当たる。発言を引用するだけでなく、そこから読み取ったことまで示している。

この結果を先行研究と比べると、考察へ進む。仮に先行研究が会議中のやり取りだけを扱っていたなら、「この参加者による会議内容の確認を理解するには、会議後に議事録を読む過程も含めて捉える必要がある」と論じられる。資料から分かったことを踏まえて、先行研究の説明に何を加えるかを述べている。

2.3 発見した順番と説明する順番を分ける

分析では、複数の発言を比べた後に、共通する特徴を見つけてカテゴリーにまとめることがある。結果を書くときは、そのカテゴリーが何を表すかを先に説明し、根拠となる発言を後に置いてもよい。読者は、先に示された説明を発言で確かめながら読める。太田(2019)も、分析で発見した順番と結果を説明する順番を区別している4。

ただし、先にカテゴリーを説明していても、分析前からそのカテゴリーを用いていたとは限らない。方法の節では、カテゴリーをどう作ったかを実際の作業順に即して報告する。途中で観点や手順を変えた場合も、変更した理由と経緯を残す。

実施した作業と、原稿上で行う説明は、時制でも書き分けられる。方法で実施済みの作業を報告するなら「比較した」、その結果を図表へ案内するなら「表1に示す」、用語を定義するなら「〜と呼ぶ」と書ける。すべてを同じ時制にそろえるよりも、その文で何を述べているかに合わせる方が、作業と説明の違いを伝えられる。


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  1. 目的、方法、結果、考察の対応は都筑(2006)、第6章を参照。構成の役割と省略できる場合は石黒(2015)、第1章「論文の構成の考え方」を参照。表は本ガイドで説明の役割として整理したものである。 ↩ ↩2

  2. 福地と園山(2019)、TOPIC 2.5「本論は『IMR』」。本書のIMRは問題(Issue)、手段(Method)、結果(Result)を指す。 ↩

  3. 結果に含まれるデータの解釈と考察の役割について、太田(2019)、第10章を参照。 ↩

  4. 分析の順序と記述の順序について、太田(2019)、第10章を参照。 ↩