8. 良い研究計画書を6つの基準で点検する
第7章でまとめた研究計画書を、次の6つの基準で読み返す。各項目の記述に不足や矛盾がないかを確かめ、赤、黄、緑で判定する。
- 赤:必要な情報がない、または節同士が矛盾していて、審査者が判断できない
- 黄:記述はあるが、根拠や具体性、他の節とのつながりが足りない
- 緑:判断に必要な説明や根拠があり、他の節とも整合している
赤と黄の項目には修正する内容を書き添える。研究アプローチや対象に照らして当てはまらない項目は「適用外」とし、その理由を残す。
問いに答えられない、実施の見通しが立たない、参加者を守れないといった問題があれば、文章の推敲より先に、問いや方法、実施条件を見直す。
8.1 計画の一貫性
- 研究課題を受けて研究目的を定め、それを資料やデータで答えるRQに具体化している
- 各RQへの答えを合わせると、研究目的で掲げたことを明らかにできる。メインRQとサブRQを置く場合は、その対応が分かる
- 各RQについて、使う資料やデータ、収集方法、分析方法の対応を説明できる
- 計画を変更した場合は、変更の理由を残し、目的、RQ、方法、主張できる範囲、倫理、工程の記述をそろえている
8.2 実行可能性
- 必要な資料やデータを得られる見通しと、利用に向けて確認が必要な点を示している
- 先行研究の方法や指導教員への相談をもとに、必要な技能、時間、費用、設備を見込んでいる
- 扱う対象や範囲が、利用できる資料やデータ、技能、期間、予算に収まっている
- 文献調査から執筆までの予定に、必要な倫理審査や許可、方法の学習、作業の遅れに備える時間を含めている
- 予定した協力やデータを得られない場合に、対象、RQ、方法、工程をどう見直すかを考えている
8.3 研究の意義
- 先行研究で分かっていることと、さらに検討すべき点を、文献を根拠に示している
- 未解決の点に取り組む必要性を説明し、単に「まだ研究されていない」で済ませていない
- RQへの答えによって、誰の理解や判断がどう変わりうるかを説明している
- 期待とは異なる結果が出た場合も、そこから何を学べるかを示している
8.4 研究の質と限界
- 研究アプローチ、収集方法、分析方法を選んだ理由を、RQとの関係から説明している
- 対象や資料の選び方と規模に根拠があり、収集と分析の手順を具体的に書いている
- 扱う概念をどう観察、測定するかを示し、使う尺度や質問、記録方法が目的に合うかを確かめる方針がある
- 研究アプローチに応じて、信頼性、妥当性、信用性などを脅かす問題と、その対策が対応している
- 事前に決めることと、調査や分析を進めながら見直すことを分け、見直す場合の判断の根拠を示している
- 仮説を検証する場合は、事前の予測と、結果を見てから考えた説明を区別する方針がある
- 混合研究では、量的結果と質的結果をどう統合し、食い違いをどう検討するかを示している
- 対策を講じても残る限界と、主張できる範囲が対応している。因果関係や他の対象への適用を述べる場合も、その範囲を支えられる方法になっている
- 資料やデータが不足した場合に、何を判断できなくなるかを示している
8.5 倫理とデータ管理
- 所属機関の倫理審査の様式と手引きに沿って、必要な配慮と手続きを整理している
- 組織の許可と本人の同意を区別し、参加の意思を確かめる方法と、途中でやめる場合の対応を示している
- 時間や心理的な負担、参加を断りにくい関係、発言の公表による不利益を検討し、対策を示している
- 仮名化や匿名化の方法を示し、役職や発言などの情報を組み合わせると本人が分かる可能性も検討している
- データの利用目的と範囲、利用できる人、保管方法と期間、廃棄の方針を示している
- 研究中に予想外の問題や参加者との関係の変化が生じたとき、倫理上の配慮を見直す方針がある
8.6 文章の明瞭さ
- 口頭で補足しなくても、専門外の審査者が研究課題、意義、RQ、方法、実行可能性、限界を判断できる
- 各節の役割が明確で、一つの段落では一つの主題を扱っている
- 段落の冒頭で要点を示し、前後の文や段落とのつながりが分かる。指示語が何を指すかも明確である
- 主要な用語は意味を示し、目的、RQ、方法を通じて同じ表記で使っている
- 確認済みの事実、仮説や見立て、これから調べることを書き分けている
- 計画上の判断に根拠があり、他の研究の知見には出典を示している
- 本文中の引用と参考文献一覧が対応し、提出先が指定する形式に従っている
| ← 前:7. 研究計画書にまとめる | 目次 | References |