12. 良い研究計画書を6つの基準で点検する
第11章では、研究を実施できるか、データと分析からRQに答えられるか、研究の価値が伝わるか、という順で計画を直しました。この3つは、修正に取りかかる順序です。ここでは、修正した計画書を6つの基準で最終点検します。
実施できるかは主に実行可能性と倫理、RQに答えられるかは論理と方法の厳密さ、価値が伝わるかは意義と明瞭性に対応します。
合計点を出すのではなく、基準ごとに次の3段階で状態を確認します。
- 赤:必要な情報がない、または節同士が矛盾していて、審査者が判断できません
- 黄:記述はありますが、根拠や具体性、他の節とのつながりが足りません
- 緑:具体的な根拠があり、選択理由や限界も含めて他の節と整合しています
研究デザイン上、当てはまらない項目は N/A とします。その場合は、適用外と判断した理由を一行で記録しておきましょう。
赤の項目は、別の基準に緑があっても相殺できません。特に、論理的整合性、実行可能性、倫理的責任のどれかが赤なら、文章を磨くより先に研究デザインを見直します。
12.1 論理的整合性と一貫性
- 問題 → 先行研究上の位置 → 目的 → RQが、一つの論理の流れになっている
- RQに答えるために必要な証拠、それをどう集めるか、どんな分析結果を得るかが明確である
- 分析結果から何を主張し、その主張がどのような貢献につながるかを説明できる
- 逆向きにたどっても、役割のない方法・データ・分析が残っていない
- 因果関係や、結果を別の人・組織・場所にも当てはめられると述べる場合、その主張を研究デザインが支えられる
- いずれかの要素を変更したときは、関連する要素、主張の範囲、倫理、工程、倫理審査や協力先への再確認の必要性をあらためて確認している
- 変更した理由と、その影響を記録している
12.2 実行可能性と現実性
- 対象者・資料・事例の選び方と規模に、根拠がある
- RQは、利用できる資料・データ・技能・期間・予算で答えられる
- RQが狭すぎて、研究として意味のある答えを得にくくなっていない
- データや現場へアクセスできる見通しがある
- 倫理審査と協力先の許可を得られる見通しがある
- 期間、技能、費用、人員、設備の見積もりに裏付けがある
- 工程の順序、作業同士の依存関係、時間の余裕が現実的である
- 参加者の募集難、欠測、機器故障、協力先の撤退など、主なリスクに代替策がある
12.3 学術的価値と意義
- 研究問題を一文で示せる
- その問題が未解決のままだと、理論や実践にどのような影響があるか(帰結)を示している
- 誰が影響を受け、何についての理解や判断が変わるのかが分かる
- 先行研究の不足、矛盾、境界条件、または問い直す前提を、根拠とともに示している
- 期待する貢献が、RQへの答えから無理なく導ける
- 予想と異なる結果が出た場合でも、そこから何を学べるかを説明している
- データ不足などにより、結論を出せないのはどのような場合かを示している
12.4 方法論の厳密さと証拠の妥当性
- 研究アプローチ、データ収集方法、分析方法を選んだ理由を、RQとの関係から説明している
- 何を事前に決め、何を実施中に更新できるのかが、研究デザインに合っている
- 実施中に見直す場合は、その時期、見直すきっかけ、判断基準、判断する人を示している
- 何を測るか、何を観察するか、誰または何を対象に分析するかが明確である
- 対象者・資料・事例の選び方、データ収集、分析を、第三者が追える程度まで具体的に書いている
- 使用する測定・質問・記録手段について、すでに検証された根拠がある。または、パイロットなどで事前に機能を確かめる計画がある
- 代替説明、バイアス、欠測、反証事例、妥当性・信用性への対策がある
- 研究の質を確かめる方法が、起こりそうな問題への対策になっている
- 限界を並べるだけでなく、それぞれの限界によって、結論を出せる範囲がどう狭まるのかを示している
12.5 倫理的責任
- 同意の取り方を具体的に示している
- 同意を撤回できる範囲、期限、手順を具体的に示している
- 仮名化/匿名化と機密性を守る方法を具体的に示している
- 参加者や現場への負担、権力差、脆弱性、再同定のリスクを検討している
- 募集から保存・共有・廃棄まで、各段階のリスクと対策が対応している
- ゲートキーパーの許可と、一人ひとりの参加者による自由意思の同意を区別している
- 必要に応じて、利益相反、研究者の安全、結果の返却、データの所有を扱っている
12.6 明瞭性と自立した文書としての品質
- 著者による口頭の補足がなくても、非専門の審査者が問題、意義、RQ、方法、実行可能性、限界を判断できる
- 冒頭で研究上の問題を示している
- 各節が、審査者のどの疑問に答えるのか分かる
- 各段落の最初の一文だけを読んでも、論理の流れを追える
- 主要な用語を全体で一貫して使っている
- 指示語が何を指すのか、文と段落がどうつながるのかが明確である
- すべての実質的な主張に、適切な出典がある
- 本文中の引用と参考文献一覧が一致し、提出先が指定する形式に従っている
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