11. よくある失敗と直し方

研究計画書を直すときは、文章を整える前に、研究デザインそのものを確認します。まず研究を実施できるか、次に集めるデータと分析からRQに答えられるか、最後に研究の意義や貢献が読者へ伝わるかを見ていきます。

11.1 研究を実施できるか

RQは、その研究者が、その時点と場所で扱える規模にします。広すぎると必要なデータと分析を決めきれません。狭すぎると研究として意味のある答えを得にくくなります。扱う内容によっては、対象へのアクセスや倫理上の理由から実施できないこともあります。

RQの規模を考えるときは、「大きすぎる」「小さすぎる」「扱うには繊細すぎる」「ちょうどよい」のどれに当たるかを、その時点の研究者と研究環境に照らして考えます。

さらに、「このRQに答えるために必要なデータは明らかか」と問い直します。対象、概念、文脈、扱う関係を具体化すると、RQを単に小さくするのではなく、実際に答えられる形へ絞り込めます(Saunders, Lewis & Thornhill, 2007, 第2章; Punch, 2016, 第4章)。

期間、費用、技能、アクセスを後回しにすると、承認、募集、データ収集、分析の途中で計画が止まります。許可を得る経路、募集できる人数、工程と費用、必要な技能を先に確かめ、主なリスクには代替策を用意します。

倫理についても、承認番号を書くだけでは、リスクをどう管理するのかは伝わりません。所属機関の倫理審査のフォーマットに沿って、募集、同意、データ収集、保管、共有、廃棄の各段階で起こりうるリスクと対策を書きます。

背景の説明に字数を使いすぎ、方法を数行で済ませるのも避けます。それでは、研究を実施できるのかを読者が判断できません。書き始める前に各節の分量を考え、方法と実行可能性を説明する余地を残します。

11.2 集めるデータと分析からRQに答えられるか

使い慣れた手法を先に決めると、RQに答えないデータを集めやすくなります。まずRQへの答えに必要なデータを考え、そこから入手先、収集方法、分析方法を決めます。

「インタビューを行う」「質問紙で調査する」のように方法名だけを書いても、その方法でRQに答えられるかは分かりません。誰から何を集め、どのように記録し、どう分析するのかまで示します。

明らかにしたい概念と、実際の指標や設問がずれている場合も、得られたデータはRQへの答えになりません。何を明らかにしたいのか、それを何から判断するのか、そのために何を尋ねたり観察したりするのかを順に確かめます。

対象も、集めやすさだけで選ばないようにします。対象者に必要な経験や知識がなければ、予定している主張を支えられません。たとえば、経営戦略に関する意思決定を、実務経験のない学生だけを対象に調べると、問いと対象がかみ合わない可能性があります。こうした概念・指標・対象のずれは、データを集めた後では直しにくい問題です(Bryman & Bell, 2011, 第1章)。

調査票を使う場合は、本番の前に、対象となる人びとに近い協力者に試してもらいます。設問がどう理解されたか、選択肢に重複や不足がないか、得られた回答を予定どおり分析できるかを確かめてから直します。

混合研究では、二種類の結果を並べるだけでは不十分です。なぜ一種類のデータだけでは足りないのか、どの段階で二つを結びつけるのか、結びつけることで何が分かるのかを説明します。

11.3 研究の価値が伝わるか

テーマの説明だけでは、何が未解決で、なぜ研究する必要があるのかは分かりません。すでに分かっていること、まだ分かっていないこと、未解決のままだと何が起きるのかをつなぎ、研究の意義を示します。

先行研究を一件ずつ要約するだけでは、研究領域の全体像も、その中での自分の位置も見えません。文献の「パッチワーク」とは、引用が多いことではなく、出典ごとの要約が並び、文献を横断して何が言えるのかが書かれていない状態です。共通する問い、理論、知見、方法をもつ研究群にまとめ、研究群どうしの一致や違いを説明します(Turabian, 2018, 第6章)。

「先行研究がない」と断言する前に、隣接する領域まで調べます。先行研究のギャップを出発点にしてもかまいませんが、何が不足しているのかに加えて、その不足を埋めると誰の理解や判断がどう変わるのかまで説明します。

新規性や貢献を大きく言いすぎると、研究デザインから導けない結論になります。期待する貢献は、得られるデータが支えられる範囲にとどめます。成果を届けたい相手と、その相手の理解や判断にどのような違いをもたらすのかを示し、同時に何を主張できないのかも書きます。


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