10. 説得的に書く
研究計画書は、それだけで内容が伝わる自立した文書(stand-alone document)にします。書き手による口頭の補足がなくても、非専門の審査者が、研究の問題、意義、RQ、方法、実行可能性、限界を本文だけから判断できるようにします(Punch, 2016, 第2章)。
引用先や付録まで読まなければ論理がつながらない構成は避けます。「読者も知っているはず」と考えて、必要な説明を省くのも同じです。
試読を頼むときは、先に内容を説明しないで読んでもらいましょう。そのうえで、「何が問題なのか」「何を問うのか」「どの証拠を使って、どう答えるのか」を相手の言葉で説明してもらいます。自分の意図と相手の理解を比べると、説明が足りない箇所が見つかります。
10.1 一段落に一つの仕事を持たせる
一つの段落には、一つの役割を持たせます。基本の流れは次のとおりです。
- 段落の主張
- その根拠となる文献・データ
- 根拠の解釈
- 次の主張または自分の研究への接続
引用しただけでは、こちらの主張は伝わりません。その文献を何のために置いたのか、そこから何が言えるのかを、自分の言葉で説明します。
10.2 用語を固定する
目的文、RQ、方法、分析、貢献では、同じ概念を同じ名前で呼びます。文章に変化をつけようとして類語へ言い換えると、読者には別の概念に見えることがあります。
主要な概念は、この研究で何を指すのかが分かるように定義します。観察や測定に使う概念では、概念的定義と操作的定義を分けて示します。概念的定義は「その概念を何として捉えるか」、操作的定義は「研究の中でどう観察・測定するか」の説明です。略語は、初めて使う箇所で定義します。
文や段落は、原則として既知の情報から新しい情報へ進めます。前の文で示した内容を次の文の冒頭で受け、新しく重要な情報をその後ろに置くと、流れを追いやすくなります。これ や その結果 だけで受けず、この方法上の制約 のように、何を指すのかを名詞で示すことも大切です。
Creswellらのフック・アンド・アイ(hook-and-eye)法では、隣り合う文や段落の主要な語・概念を線で結べるか確かめます。線で結べない箇所を探すと、論点が急に飛んでいるところを見つけやすくなります(Creswell & Creswell, 2018, 第4章)。
ただし、同じ言葉を繰り返すだけでは、論理がつながったことにはなりません。比較、因果、対照、具体化など、前後がどのような関係にあるのかも説明しましょう。
10.3 構造から推敲する
推敲では、細かな言い回しより先に全体の構造を確認します。次の順で進めると効率的です。
- 見出しだけを読んでも、論理の流れが分かるか
- 問題 → 先行研究上の位置 → 目的 → RQ → 方法 → 貢献がつながっているか
- 各段落の役割と順序が明確か
- 主張には根拠があり、その根拠には出典があるか
- 文を短くし、不要な名詞化、受動態、重複を減らせるか
- 表記、引用、参考文献、図表番号がそろっているか
最初から一文ずつ磨く必要はありません。アウトラインを作り、まずは粗くても全体を書きます。その後に構造、段落、文の順で直していくと、手戻りを減らせます。
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