1. 主張と根拠を明確にする
仕事では、報告や相談をもとに、次の対応を考える。ところが、相手の説明を聞いても、何が起きたのか、なぜそう判断したのかが分からないことがある。
こうしたとき、何を聞けば状況を確かめられるだろうか。相手が伝えようとする判断や結論を主張、その主張を支えるものとして挙げる理由や情報を根拠という。主張を聞いたら、何を根拠にそう考えたのかを確かめる。
1.1 何が起きたかを具体的にする
後輩の山田さんがあなたに相談してきた。上司から頼まれた資料の作成についてである1。
上司からの依頼が曖昧なので、いつも作業が止まるんです。
山田さんは、「作業が止まる」理由として「依頼が曖昧だから」と説明している。まず、「依頼が曖昧だ」という主張に対して、どんな根拠を挙げているのかを確かめる。
どの依頼で、何が分からなかったんですか。
山田さんがチャットの履歴と作業記録を見ながら答えた内容を整理すると、次の二点だった。
- 上司から山田さんにチャットで届いた直近5件の依頼のうち、3件の依頼メッセージに、資料を何時までに渡せばよいかが書かれていなかった。
- その3件では、山田さんが上司に期限を尋ね、返事を待ってから作業を始めた。
山田さんは、「依頼が曖昧だ」という主張に対して、「3件の依頼メッセージに提出期限が書かれていなかった」ことを根拠として挙げている。主張と、それを支える根拠を対応させて聞く。
1.2 仮説、前提、推論の関係を確かめる
なぜ上司は期限を書かなかったのだろうか。たとえば、「依頼した時点では、まだ期限が決まっていなかったのかもしれない」と考えられる。このような、まだ確かめていない説明が仮説である。
この仮説を出発点、つまり前提にすれば、「その時点では、上司は確定した期限を伝えられなかった」と考えられる。前提からこのような結論を導くことが推論である。確認した事実やルールも、前提として使われる。
確かめるべきなのは、依頼時点で期限が決まっていたかである。
依頼された時点では、もう期限は決まっていたんですか。
1.3 山田さんと次の確認を決める
山田さんにも期限がいつ決まったのか分からなければ、上司に確認してもらう。
依頼を受けた時点で期限が決まっていたかを、上司に聞いてみてください。決まっていなかったなら、いつ分かるのかも聞いてみてください。
TOCの思考プロセスでは、出来事や状態を一つずつ文にし、箱に書いて、文同士の関係を矢印で結んで考える。ここで行った、出来事の意味を明確にし、その内容を認める根拠を確かめる作業が、TOCの論理の点検の出発点になる23。
身近な相談で確かめる
最近受けた報告や相談を一つ思い出し、相手の主張、その根拠、まだ分からないことを分けてみる。そのうち結論を左右する点を一つ選び、相手に何を尋ねれば確かめられるかを考える。
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この章のケースと数値は、説明のために作成した架空の設定である。 ↩
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Dettmer(2007)、pp.34–38。本章の主張と根拠、仮説・前提・推論の整理とケースは、本ガイドの解説である。 ↩
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Dettmer(2007)、pp.38–40、TOCICO Dictionary(2012)、entityとentity existence reservation。文の意味が明確かという点検と、その内容を事実として認める根拠があるかという点検を区別している。 ↩