第8章 利益の取り分はどう決まる?
第5章の食品工場では、商品を価値どおりに売ると、剰余価値と利益が同じ2万円になりました。しかし競争のなかでは、自社の働き手が生んだ剰余価値と受け取る利益が違う額になる場合があります。その違いを調べるため、元手が同じ二社を比べてみましょう。
同じ元手でも増え分が違う
売れ残りや値下げだけでなく、競争も利益の受け取り方に関わります。異なる分野で生産する架空のA社とB社が、それぞれ100万円を元手にするとしましょう。A社は材料や設備に80万円、賃金に20万円を出し、B社はそれぞれ60万円と40万円を出します。両社とも同じ期間に資本をすべて使い切り、労働力を価値どおりに買うとします。新しい価値の半分が賃金を補い、残り半分が剰余価値になるという仮定です。賃金が新しい価値の半分なので、新しい価値は賃金の2倍になります。
A社で生まれる新しい価値は40万円で、剰余価値は20万円です。材料や設備から移る80万円を加えると、商品全体の価値は120万円になります。B社では新しい価値が80万円、剰余価値は40万円です。移る価値60万円を加えた商品全体の価値は140万円になります。

図8.1: 同じ100万円を元手にしても、労働力への支出が違うA社とB社では、生まれる剰余価値が20万円と40万円に分かれます。
価値どおりに売れば、同じ100万円の元手から得る利益に20万円と40万円の差ができます。
利益の高い分野へ資本が向かう
利益の高い分野には新しい会社が入り、既存の会社も生産を広げようとします。その分野の商品が増えて価格が下がれば、元手に対して得る利益の割合も下がります1。利益の低い分野から資本が引いて商品が減れば、逆に価格を上げる圧力が働きます。マルクスはこの競争によって、元手に対する利益の割合がならされる傾向を考えます。
二社の剰余価値の合計60万円を、同じ額の元手に同じ割合の利益がつくように分けるモデルを考えましょう。元手の合計は200万円です。60万円÷200万円=30%なので、各100万円の元手に対する利益は30万円になります。支出100万円を補って30万円が残るには、各社の商品全体の価格が130万円である必要があります。この平均化にもとづく利益を「平均利潤」、費用に平均利潤を加えた価格を「生産価格」と呼びます2。

図8.2: A社とB社が生む剰余価値は20万円と40万円ですが、平均化した利益は各30万円で合計は60万円のままです。
二社が増え分を持ち寄って分ける契約をする、という意味ではありません。競争によって価格が変わる結果、A社は生んだ剰余価値より10万円多く、B社は10万円少なく受け取ります。新しい価値がここで作られたわけではありません。またこの表は、買い入れる材料などの価格にも平均化の影響が及ぶことまでは計算していません。現実の価格を直接求める式には使えず、すべての会社がいつも同じ割合の利益を得るわけでもありません。
剰余価値の出どころを生産に求めることと、一社の利益をその会社の働き手が生んだ剰余価値と同額にすることは違います。会社は他の分野の利益も見ながら、次の投資を考えます。その投資で生産を広げても、商品が予定どおり売れるとは限りません。次の章では販売と支払いが滞り、仕事が止まる場合を考えます。
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