1. 計画書で答える5つの問い
調べたいテーマがあっても、それだけでは研究を始められない。何を明らかにし、そのためにどのようなデータを集めるのか。必要なデータを実際に得られるのか。研究計画書では、こうした疑問への答えを、次の5点にまとめる。
- 何を明らかにするのか:どのような対象について、何を知りたいのかを示す。
- なぜ明らかにする必要があるのか:現場で対処が必要なこと、まだ説明できないこと、知見どうしの食い違いなど、研究を必要とする理由を示す。「(理由)だから」の形式で答える。
- 何のために明らかにするのか:答えが分かると、誰の理解や判断がどう変わりうるかを示す。「(目的)のために」の形式で答える。
- どうやって明らかにするのか:必要なデータ、収集方法と分析方法、研究の質を確保する方法が、問いに合っていることを示す。
- 本当に実行できるのか:対象へのアクセス、倫理、期間、技能、費用、リスクへの備えが現実的であることを示す。
5つの問いへの答えをメモにする
まずは、考えている研究について、5つの問いそれぞれへの答えを短く書き出す。普段使う言葉でよい。決まっていないことや確かめていないことは「要確認」とする。「どうやって」「本当に実行できるか」は、思いつく候補や確認すべき条件を残せばよい。
たとえば、リモートワークに関心がある場合、次のようなメモを作れる。これは、本ガイドの説明用の例である。
何を:リモート環境のソフトウェア開発チームで、意思決定がどのように行われるのかを知りたい。
なぜ:チームで何か決めるとき、同じ人に相談することが多く、その人がいないと話が進まないのが気になるから。
(先行研究でどこまで説明されているかは要確認)
何のために:分散的な協働の理解を深め、チーム設計を考える材料にするために。
(こうした貢献につながるかは要確認)
どうやって:会議やチャットの記録、関係者への聞き取りが使えるかもしれない。
本当に実行できるか:協力してくれるチームはいそう。
(調査に必要な期間は要確認)
提出先が求める事項を確認する
5つの問いへの答えに加えて、募集要項や指定の様式を確認し、次のこともメモしておく。
- 提出要件:締切、字数、必須の見出し、評価基準
- 表記の規則:引用形式、仮名化と匿名化の指定
- 読者:誰が読むのか、どの程度の専門知識を前提にできるか
- 使える資源と必要な許可:研究期間、予算、設備、ソフトウェア、データ、倫理審査や協力先の許可
補足:期待どおりの結果でなくても価値があるか
望ましい結論が出たときだけ価値がある計画ならば、問いの立て方を見直したほうがいい。どのような結果になったとしても、研究に価値が残るように計画することが重要である。このことをSaundersらは結果の対称性(symmetry of potential outcomes)と呼んでいる(Saunders, Lewis & Thornhill, 2007, 第2章)。
先ほどの例では、「特定の人への偏りをなくしたい」と考えて研究を始めるかもしれない。しかし、調べた結果、専門知識や責任が特定の人に集まっており、その条件では判断の集中を避けるのが難しい、という結論になる可能性がある。その場合も、意思決定が集中する条件を示すことができれば、知識の共有や代理の体制など、チーム設計を考える材料になる。そのためにも「何を」のメモでは、求めている結果が出ることを前提とした書き方にしないようにしたい。
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