付録:プロトコルのテンプレート
以下は、研究の概要、データ収集の手順、研究者が調べる問いと分析計画、報告の構成を記入するためのテンプレートである。Yin(2018)の第3章の四つの構成要素に、設計と分析の項目を加えている。第8章で作った草案を書き込む。未確認の項目は、何を確認すれば埋められるかを書いておく。
本調査の前に、小規模な調査で問い、資料の集め方、記録の取り方を試すことをパイロット調査と呼ぶ。そこで見つかった問題をもとに、計画を見直す。
研究の概要
研究目的と問い
研究題目:
研究目的:
先行研究で説明できていること:
この研究で明らかにすること:
中心となる研究質問:
必要な補助質問:
ケーススタディを選ぶ理由:
成果を読む人と利用目的:
「ケーススタディを選ぶ理由」には、何を知りたいかと、実際の活動をその場で調べる必要がある理由を書く。実験のように、条件を変えて結果を比べることができるかも考える。ほかの方法で得られる答えと比べ、ケーススタディで何を明らかにできるかを説明する。
ケースと調べる範囲
ケースとして扱う対象:
調べるケースの数:
ケースの内部で個別に比較するもの(例:問い合わせ):
対象期間:
対象組織、場所、活動:
ケースに含める人や出来事:
ケースの外にあるが、調べる必要がある関係者や状況:
対象外とする範囲と理由:
話を聞く人数とケース数を区別する。一つの窓口をケースとして調べるなら、担当者と責任者に話を聞いても、二つのケースを調べているわけではない。個々の問い合わせを比較する場合は、その結果から窓口の仕事の進め方をどう説明するかも考える。
ケースの選定
| 候補ケース | 研究上の選定理由 | 命題に関係する条件 | 予測する結果 | 証拠へのアクセス |
|---|---|---|---|---|
| [ケースA] | [理論の検討、日常的な状況、時間的変化など] | [条件] | [結果や過程] | [資料、観察、協力者] |
| [ケースB] | [複数ケースの場合に記入] | [条件] | [結果や過程] | [資料、観察、協力者] |
複数ケースでは、各ケースでどんな結果を予測し、なぜそう考えるかを書く。同様の結果を予測する追試(literal replication)か、理論から考えて異なる結果を予測する追試(theoretical replication)かを明記する。協力を得やすいこととは別に、そのケースを選ぶ研究上の理由を説明する。
命題と競合説明
| 記入項目 | 内容 |
|---|---|
| 検討する命題や暫定的な説明 | [どの条件で、何が起こると考えるか] |
| その説明を支える先行研究 | [文献と関係する知見] |
| 支持する証拠の予測 | [説明が成り立つなら観察されること] |
| 反する証拠の予測 | [説明の修正や棄却が必要になること] |
| 競合する説明 | [別の理由でも同じ結果が生じる可能性] |
| 説明を区別する証拠 | [どの説明が実際の経過を説明できるかを判断する資料] |
命題を置かない探索的研究では、何を調べ、何がわかれば目的を達したと判断するかを書く。調査から命題を作る場合は、どの証拠から、どんな理由でその命題を考えたかを残す。
データ収集の手順
アクセスと参加者への説明
調査先との連絡方法と必要な許可:
資料を使える範囲:
参加者への説明内容と同意の取り方:
録音、撮影、引用の条件:
匿名化する対象と方法:
原資料の保管場所とアクセス権:
保管期間と削除方法:
所属機関の倫理審査などへの対応:
研究者の役割と、調査対象との関係:
収集予定と代替手段
| 証拠源 | 収集するもの | 入手先と方法 | 収集時期 | 制約と代替手段 |
|---|---|---|---|---|
| 文書 | [規程、議事録など] | [入手先] | [時期] | [欠落、公開範囲など] |
| 保存記録 | [履歴、件数、時間など] | [入手先] | [時期] | [定義や保存範囲など] |
| インタビュー | [経験や出来事の説明] | [役割や選定理由] | [時期] | [記憶、協力の可否など] |
| 観察 | [会議、活動など] | [観察方法] | [時期] | [観察可能な範囲など] |
| その他 | [必要な証拠] | [入手先] | [時期] | [制約] |
証拠源は、問いを確かめるために必要なものを選ぶ。同じ出来事を複数の資料や話から確かめられるように、証拠源を組み合わせる。反対意見を持つ人の話や、予測に合わない出来事の資料も得られるかを確認する。
記録とデータベース
証拠IDの付け方:
分析に使った原資料の該当箇所を記録する方法:
出所、取得日、該当箇所の記録方法:
観察事実と研究者の解釈を区別する方法:
転記、要約、コード付けの確認方法:
収集できなかった資料と、その理由の記録方法:
証拠台帳には、元の資料を探すための情報を残す。保管する資料と、報告で公開できる資料の範囲は分けて管理する。
| 証拠ID | 種類と出所 | 取得日 | 該当箇所 | 関連する問い | 制約 |
|---|---|---|---|---|---|
| [D001] | [資料名、作成者] | [日付] | [頁、行、時刻など] | [RQ1] | [欠落や利用条件] |
パイロットと設計変更
パイロットで確認すること:
実施するケースや場面:
問い、収集、記録、分析について修正したこと:
本調査の途中で変更を検討する条件:
変更の理由と影響を記録する場所:
研究者が調べる問いと分析計画
プロトコルの問い
| 研究者が確かめること | 必要な証拠 | 想定する証拠源 | 反証や競合説明の確認 |
|---|---|---|---|
| [どの段階で時間がかかったか] | [受付から回答までの経過] | [対応履歴、観察、関係者の説明] | [記録の定義、記録に残らない作業] |
| [結果が生じたのはなぜか] | [原因と考える出来事、その後の変化] | [時系列の資料、当事者の説明] | [ほかの原因でも説明できるか] |
この表には、研究者が調査で答える問いを書く。インタビューでは、相手が実際に経験したことを話せる質問に変える。「なぜ確認待ちで遅れたのですか」と理由を決めつける質問は避け、「この問い合わせを受けてから回答するまでを教えてください」と尋ねる。
分析の進め方
調べる概念と、それを捉えるための証拠や指標:
記録の整理方法:
比較するものと、比較で確かめること:
各ケースについて整理する経過や特徴:
個々の出来事の比較から、ケース全体について何を説明するか:
ケース間で比較する説明と条件(複数ケースの場合):
支持、反証、未決を判断する基準:
当初の命題を修正した履歴の残し方:
次の分析表には、主張ごとに、使った証拠と、そこから判断した理由を書く。
| 主張や暫定的な説明 | 支持する証拠ID | 反する証拠ID | 競合説明との比較 | 判断と理由 |
|---|---|---|---|---|
| [主張1] | [D001、I002] | [反する証拠ID] | [別の理由でも同じ経過を説明できるか] | [支持、修正、未決など] |
質の確認
- 調べたい概念を、どの証拠や指標で捉えるかが明確である。
- 同じ事実について複数の証拠を照合する計画がある。
- 因果を説明する場合、競合説明を確かめる証拠も収集する。
- ケースを選ぶ理由が、研究の問いや確かめたい説明に合っている。
- 問い、収集手順、原資料、分析、結論を追跡できる。
- 得られない証拠があるために、何を判断できないかを説明する。
報告の暫定的な構成
1 研究上の問題、研究質問、理論的な位置づけ
2 ケースの定義、境界、選定理由
3 収集と分析の方法、研究者の立場
4 ケースの背景と、問いに関係する出来事
5 分析結果、競合説明、反する証拠
6 研究質問への回答、分析的一般化、限界
付録 プロトコル、証拠源の一覧、分析の補足
この構成は、説明的ケーススタディを想定した一例である。探索的研究や記述的研究では、目的に合わせて変える。
読者が結論を判断するために本文へ載せる証拠:
主要な情報提供者に確認してもらう箇所と方法:
事実や解釈の食い違いが残った場合の扱い:
公開時の匿名化と、証拠の利用条件の確認方法:
一般化する概念や命題、その適用条件:
問いに答えるために必要な調査を行ったと判断する根拠:
| 前:8. 自分の研究計画に書き換える | 目次 | 次:参考文献と参照箇所 |