第3章 生産性が上がったら価値はどうなる?
前の章では、Tシャツ1枚を縫うのに1時間かかりました。その後、新しい設備が広まり、社会全体で縫える標準的な時間が30分になったとしましょう。1時間で作れるTシャツは1枚から2枚に増えました。作れる枚数が2倍になると、価値も2倍になるのでしょうか?

図3.1: 1枚あたりの縫製時間は1時間から30分に短くなった。
もとの作り方では1枚に1時間の労働が必要でした。新しい作り方では1時間で2枚を縫えるので、1枚あたりは1時間÷2枚=30分です。つまり、1枚を縫うための社会的必要労働時間は半分になりました。したがって、縫う仕事が1枚に加える価値も半分になります。
同じ値段なら価値も同じ?
価値は商品を作るのに社会で必要な労働の量で表します。一方、買い物で目にするのは「Tシャツ1枚3,000円」という表現です。このように商品の価値をいくらのお金と交換するかを表したものが「価格(price)」です。マルクスは商品の価値がお金の形で表されると考えました。
しかし、前のセクションで見たように、1時間あたりに縫えるTシャツの枚数が増えると、価格は変わらなくても、縫う仕事が1枚に加える価値は下がります。逆に、価値は変わらないが、価格だけが下がる場合もあります。たとえば、売れ残っているTシャツを売るために2,400円に値下げすれば、価格は価値を下回ります。つまり、価値を表す金額が3,000円でも、実際に売る価格はその金額からずれることがあります。

図3.2: 価値を表す金額は変わらなくても、価格が変わることはある。
次の章では、売買を通じて動くお金を見ていきます。暮らしに必要なものを買う場合と、事業でお金を増やす場合では売買の目的が違います。
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